10. 抽象詞(名詞節)
もうすぐ「はじロジ」も折り返し地点だね。そろそろ「~ということ」という表現を学んでもいい頃かな。
『5. 述語に慣れる』でやった問題の (3), (4), (6) を再掲するね。
- 3) コションは、ソラがラチュマチャドにいることを知っている。
- = la .kocon. djuno lo du’u la .soran. zvati la .latcmatcad. kei ku
- djuno
- x1 は x2(命題)が正しいと x3(題目)について x4 (認識体系)で知っている
la .kocon. = コション(と呼ばれているもの)
lo du'u la .soran. zvati la .latcmatcad. kei ku = ソラがラチュマチャドにいるということ(命題)
- 4) 私は歩くのが好きだ。
- = mi nelci lo nu cadzu kei ku
- nelci
- x1 は x2 が好きだ
- cadzu
- x1 は x2 を x3 (肢)で歩く
lo nu cadzu kei ku = 歩くこと
- 6) 私はあなたにラチュマチャドで会えて嬉しい。
- = mi gleki lo nu mi penmi do la .latcmatcad. kei ku
- penmi
- x1 は x2 と x3(所)で会う
- gleki
- x1 は x2(事) について嬉しく思う/幸せに思う
do = あなた
lo nu [文] kei ku= [文]という出来事
あー、「~ということ」をどこかで見たと思ったらこのときだったか。えっと、
- lo nu [文] kei ku = [文]という出来事
- lo du’u [文] kei ku = [文]という命題
の2つがあるね。
そう。英語だと名詞節といえば “that” の1つだけだけど、ロジバンでは「ということ」を表すための語がいくつか用意されてるの。
ちなみに「命題」って何?
大雑把にいえば「真偽の定まる文」くらいの意味だよ。信念(「信じる」「推論する」「思う」「疑う」など)の対象としてよく使われるよ。
ふーん、なんかよくわかんないけどいいや。
「命題」を使うところは辞書に書いてあるから多分そんな気にしなくても大丈夫だよ。
ロジバンでは、名詞節(「項節」と言ったほうが正確かな?)は
lo XX [文] kei ku
の形になります。これの「XX」にあたる部分を 抽象詞 と呼びます。NU類 とも言うよ。
まずはこの2つ(+α)だけ押さえておこう。
- lo nu
- 冠詞+抽象詞。{lo nu}と{kei ku}で文を挟むことで、その文で表される「出来事」を意味する項になる。
- lo du'u
- 冠詞+抽象詞。{lo du'u}と{kei ku}で文を挟むことで、その文で表される「命題」を意味する項になる。
- kei
- 終止詞。抽象節(NU類の後に続く文)の「閉じカッコ」として機能する。
あと、ka(属性/性質)とか ni(量)とか si’o(概念)とかもあるけど、それは今は覚えなくていいや。
ううん、これだけ見てもしっくり来ないな。
よし、それなら実践あるのみ。問題を解いてみよう。
- 次のロジバン文を日本語に訳してみよう。
- mi badri lo nu le ninmu ku morsi kei ku
- lo nu citka lo plise ku kei ku pluka le cipni ku
- le nanmu ku birti lo du’u le plise ku kukte kei ku
- lo nu tadni la .lojban. kei ku cinri mi
- mi jinvi lo du’u do melbi kei ku
- badri
- x1 は x2 (事)について悲しい
- morsi
- x1 は死んでいる
- plise
- x1 は x2 (種類)のリンゴ
- pluka
- x1(事)は x2 にとって、x3(条件)のもと快い/心地良い
- cipni
- x1 は x2(種類)のトリ
- birti
- x1 は x2(命題)が真であることを確信している
- kukte
- x1 は x2 にとって美味しい
- tadni
- x1 は x2 を学ぶ/研究する
- cinri
- x1(事)は x2 にとって興味深い
- jinvi
- x1 は x2(命題)・ x3(題目)を、x4(根拠)により真であると考える
- melbi
- x1 は x2 にとって x3(性質)・ x4(基準)において美しい
まあこんな感じかな。
- 私はあの女性が死んでいるという出来事について悲しく思う。
- リンゴを食べることはあのトリにとって快い。
- あの男はあのリンゴが美味しいと確信している。
- ロジバンを学ぶことは私にとって興味深い。
- 私は、あなたは美しいと思う。
おっけー。まあ、ただの名詞節みたいなものだから大丈夫だよね。変わってるところと言えば、ロジバンは構文厳密を掲げてるから「括弧閉じ」の語句(kei)があるってことくらいだし。
うん。でもなあ…、この {kei ku}が長ったらしいなって感じる。
あ、あとさ、「lo … ku」 って述語になれる語句を項として使えるようにするやつだったよね。 ってことは {nu [文] kei} ってもしかして述語として使えるの?
鋭いね!実はその通り。厳密なことを言うと、抽象詞は文から述なれ語を作る機能語 なんだよ。
でも、「[NU類] [文] kei」を実際に述語として使うことはあんまりないから気にしなくていいよ。
lo [NU類] [文] kei ku
の形をしっかり覚えてくれれば十分!
なるほどなあ。{nu … kei}は「…な出来事だ」、{du’u … kei}は「…な命題だ」くらいの述語になるのかな。
ま、コションが気にしなくていいって言うのなら、これ以上はいいや!
True/False Questions
- 句 {lo nu [文] kei ku} は「[文]という出来事」という意味の項である。
- du'u は「属性」を表す。
- nu は「命題」を表す。
- NU類は、厳密には、後続の文を取り込んで述語として使える語句を形成する機能を有する。
- 抽象詞とNU類は同じ語群を指す。
-/- answers correct!