16. 否定文
気づいた方もいるかと思いますが、少し前から1章あたりの新出単語と例文を増やしています。というのも、ロジバンの文の骨組みの基本はほとんど押さえたので、あとは表現力を広げていく章になるからです。ですので、並行して語彙力も上げていき、ロジバン文を読みこなす練習をしてもらえればと思います。
流石に平叙文ばかりでそろそろ飽きてきたと思うので、ここらでひとつ否定文をやりましょう。
最もシンプルな否定の方法は、述語(selbri)の先頭に na をつける 方法です。これだけで「~は真ではない」という意味になります。
- na
- 文を否定する。ふつうは述語の先頭につけて用いる。「~は真でない」
- mi na catra le gerku
- 私はあの犬を殺していない。
- la .miran. na dasni lo crino kosta
- ミランは緑のコートを着ていない。
- mi na du la .kocon.
- 私はコションではない。
- catra
- x1 は x2 を x3 (動作/方法)で殺す
- gerku
- x1 は x2 (種類)のイヌ科動物
- dasni
- x1 は x2 を x3 (着用様式)で着ている/履いている/被っている/身に付けている
- crino
- x1 は緑色
- kosta
- x1 は x2 (素材)のコート/ジャケット/マント
タグのときもそうだったけど、na は述語(selbri)が始まる印にもなるので、cu の代わりになります。
特にコメントする余地のないくらいに簡単だね…。
あ、真であることを強調するような語はないの?「実に」みたいな。
ja’a って語があるよ。これも na と同じように使えて、文全体を肯定する 働きがあります。na の逆だね。
- ja’a
- 文を肯定する。ふつうは述語の先頭につけて用いる。「~は実に真である」
- do ja’a ca jmive
- 君は確かに今生きている。
- ti ja’a prenu .i na minji
- これは本当に人です。機械ではありません。
- prenu
- x1 は(心理学上の)人
- minji
- x1 は x2 (機能/用途)の機械
なるほどー。対の意味の語が同じように使えるっていうのは分かりやすくていいね。
さて、na や ja’a は文を否定/肯定する語でしたが、述語をなんやかんやする語としてNAhE類があります。
NAhE類は述なれ語の頭について、反対の意味をもつ語や中間の意味をもつ語などを作り出します。文法上は、SE類(転換するのに使うやつ)とほとんど同じと思ったらいいよ。
- to'e
- 直後の述なれ語を反対の意味の述なれ語に変換する。
- no'e
- 直後の述なれ語を中立的な意味の述なれ語に変換する。
- je'a
- 直後の述なれ語を同じ意味の述なれ語に変換する。強調に使われる。「実に」「本当に」「確かに」
- na'e
- 直後の述なれ語を元の意味ではない他の意味の述なれ語に変換する。
- mi prami do
- 私はあなたを愛する。
- mi to’e prami do
- 私はあなたを憎む。
- (私はあなたを反-愛する。)
- lo vi tanxe cu barda
- この箱は大きい。
- lo vi tanxe cu no’e barda
- この箱は大きくも小さくもない。
- lo nu cilre fi lo lojbo gerna cu je’a zdile mi
- ロジバン文法を学ぶのは本当に楽しい。
- prami
- x1 は x2 を愛する/にたいして愛情が湧く
- tanxe
- x1 は x2 (内容)・ x3 (素材)の箱/カートン
- barda
- x1 は x2 (性質)に関して、 x3 (比較対象)の中で大きい
- cilre
- x1 は x2 (命題)・ x3 (題目)を x4 (情報源)から x5 (方法)によって習う
- gerna
- x1 は x2 (言語)の x3 (性質)に関する文法
- zdile
- x1 (事)は x2 (観点)にとって x3 (性質)についておもしろい/愉しい
NAhE類は cu の代わりにならない ことに気をつけてね。
「NAhE [述なれ語]」という複合体自体が述なれ語として使えるから、cu がないと tanru を形成しちゃうこともあります。裏を返せば、「NAhE [述なれ語]」という句は tanru の部品として使うことができます!
- lo crino to’e barda
- 緑色の小さい(反-大きい)もの
- lo na’e crino kosta
- 緑ではない(他の色の)コート
ふむふむ。ところで、定義を見る限りでは na’e と na ってそんなに変わらないような…。
統語上の違いもあるけど、na’e と na の大きな違いは示唆的かどうかだね。たとえば、次の2つの文を考えてみよう。
- la .miran. na dasni lo crino kosta
- ミランは緑のコートを着ていない。
- la .miran. cu dasni lo na’e crino kosta
- ミランは緑でないコートを着ている。
naの文は、その文が真ではないということを表すだけです。つまり、ミランが緑のコートを着ていなければどんな状況でもOK。つまり、ミランが全裸でも、1つ目の文は正しいことになるの。
一方で、na’e の文の方はというと、「緑ではない何か別の色のコートを着ている」ということになる。{na’e crino}は「色はついているけれど、緑ではない色だ」ということを意味しています。この「色はついているけれど」というところが「示唆的」ってことです。
見ようによっては、部分否定ととれなくもないときはあるね。
ふーむ、なるほど。じゃあ、これとかも。
- ti na nanmu
- これは男ではない。
- ti na’e nanmu
- これは男ではない。
上の文だと、男でさえなければ真なわけだから、例えば「これ」が無機物のときも真になるよね。
下の文だと、示唆的な部分…、この例だと「性別はある」かな? だから、「性別はあるけれど、男ではない別の性だ」くらいのニュアンスを持ってるのが下の文ということかな。
そうだね。
とはいっても、実用上は na も na’e もそんな厳密に使い分けなくても大丈夫だよ。
否定に困ったら na を使えば大丈夫。 na’e による否定よりも、na による否定のほうが広いからね。
基本は na で、ちょっと凝りたいときに NAhE類を使うって感じだね。
True/False Questions
- na や ja'a は cuの代わりになる。
- na は述語を否定するが、na'e は文全体を否定する。
- NAhE類は述なれ語について新たな述なれ語を作り出すので、cuの代わりになれない。
-/- answers correct!