19. 関係詞
この章は、統一した理解のために少し独自研究を含んでいます。ロジバンで意思疎通を図る上では何の問題もないと思われますが、他の文書と異なる解釈がなされているかもしれませんのでご注意ください。
今回は関係詞についてやります。関係詞というのは、項(sumti)に別の項や文を関係付けるような語のことです。ま、修飾方法の一つだね。
項-項の話は、項-文の話に書き下せるので、まずは項を文で修飾することを学びましょう!
項を文で修飾する - 関係節(poi/noi) -
項を文で修飾する際、その文のことを関係節と呼びます。
日本語でいえば、「あそこに立っている人が僕の母親です」の「あそこに立っている」だね。
その文だと、「あそこに立っている」が関係節で、その直後の「人」に係ってるわけだね。
だね。ロジバンでの項と関係節の構造は、
となります。つまり、後置修飾です。
キーとなるのは poi と noi、そしてその終止詞である ku’o だね。
- poi
- 制限的関係詞;直前の項(sumti)に直後の文を係らせ、その項の指示対象を選り抜く。
- noi
- 非制限的関係詞;直前の項(sumti)に直後の文を係らせ、その項の指示対象を説明する。
- ku'o
- 終止詞; NOI類(poi, noi)で開かれた関係節を閉じる。
- mi citka ti poi ke’a lenku
- 私はこれらのうち冷たいものを食べる。
- mi citka ti noi ke’a lenku
- 私はこれらの冷たいものを食べる。
- lenku
- x1 は x2 (基準)において冷たい/涼しい
うっひゃー、出たよ出たよ。制限的と非制限的!英語でもなんとなくのままだわ。
でも、その前に、ke’a ってのは何?
ke’a は被修飾項(今回なら ti)の関係節内での位置を示す 項だよ。上の文で言えば、ti(の一部)が冷たいことを意味しています。
ke’a が無い場合は、関係節で省略された項の位置の一番初めの部分に ke’a が想定されます。大体 x1 か、文末の項位置だね。
- ke'a
- 関係代項;sumtiに関係詞で節を繋げる際、その本体のsumtiの節の中での位置をke'aによって表す。
それじゃ、制限的と非制限的の違いについて。ロジバンの制限的と非制限的は英語とは少し違うように思います。
まず、ロジバンの「制限的」とはさらなる厳選をするということ。係っている項の指示対象のうち、さらに関係節をも満たすもの というのが poi のニュアンス。
一方で、ロジバンの「非制限的」とは指示対象の説明をしているということ。係っている項の指示対象がどんなものなのかを説明するもの というのが noi のニュアンス。
poiだと、項 + 関係節 のセットで指示したいものを指示 していて、noiだと、項単体 で指示したいものを指示して、noi節はその項が何を指示しているかのヒントを与えてる って感じか。
うん、そんな感じだね。
もうひとつの説明として、tiの指示するものを固定したままで、poi節とnoi節を消してみよう。
- mi citka ti
poi ke’a lenku- 私はこれら
のうち冷たいものを食べる。
- 私はこれら
- mi citka ti
noi ke’a lenku- 私はこれら
の冷たいものを食べる。
- 私はこれら
上の文だと、ti は熱いものも含んだ諸々を指しているかもしれないから、poi節が消えると、熱いものも食べるという文になっちゃいます。
一方で、下の文では、tiそれ自体が冷たいものを指しているから、noi節が消えても、文の内容は変わりません。
なるほどー。「poi節含めて言いたいこと、noi節なくても言いたいこと」と覚えたらいいかな。
さて、[冠詞(lo/le)] [述なれ句] ku という構造は項(sumti)なのでもちろん関係節で修飾できるよね。
実は、ku の直前にpoi/noi節を挟むこともできる のです。ku が省略されている場合、関係節は ku より前にあるとみなされます。
[冠詞] [述なれ句] poi/noi [文] ku'o (ku)意味の違いはというと、noiについてはそんなに大きく意味は変わりません。さっきと同じように考えて。
大事なのは poi のほうで、項の意味が「[述なれ句]の x1 かつ poi節の ke’a を満たすようなもの」という意味になります!
- mi citka lo cidja poi ke’a lenku [ku]
- 私は冷たい食べ物(食べ物であり、かつ冷たいもの)を食べる。
- cidja
- x1 は x2 (摂食者)のための食べ物/食糧/餌
{lo cidja ku poi ke’a lenku} だと、lo cidja ku でいくつか食べ物が指示されていて、poi節がその中から冷たいものだけを選びとるけど、{lo cidja poi ke’a lenku ku} だと、「食べ物 かつ 冷たい」なものがダイレクトに指示される…って感じ?
そんな感じ。思い切って言えば、ku前のpoiは英語の制限節と同じです。
「[述なれ句]だけじゃ具体的にどれを指しているか分からないから、関係節でさらに対象を絞り込む」とするのがku前のpoiの役目です!
ふーむ…。なんか、かなり理論的なところに踏み込んだね。
ごめんね。
実際の場では、ku抜きでpoi修飾している形がかなり使われてるので、教えておかないといけない部分なのでした…。
項を項で修飾する - 関係句(pe/ne) -
ちょっと長期戦になってきたけど、次は項を項で修飾する方法です!
関係節のときと同じで制限的なものと非制限的なものの2つがあります。pe と ne です。
- pe
- 制限的関係詞;直前の項(sumti)に直後の項を係らせ、前の項の指示対象から直後の項と関係のあるものを選り抜く。
- ne
- 非制限的関係詞;直前の項(sumti)に直後の項を係らせ、前の項の指示対象を直後の項と関係があるとして説明する。
さて!この pe と ne の意味ですが、ロジバンでの定義を見たほうが使い方も理解しやすいかも。
- pe [sumti] = poi ke’a srana [sumti]
- ne [sumti] = noi ke’a srana [sumti]
- srana
- x1 は x2 に関連する/関係がある
「制限的」なのは p で、「非制限的」なのは n なんだね。統一感あっていいね。
えっと、「[sumti]と関係があるような」っていうのが pe/ne の意味で合ってる?
正解。日本語の「の」にあたる語 がこれらの語です。所有関係かもしれないし、もっと緩い関係かもしれないということは注意してね。
文法的な振る舞いや意味については、{poi}-{noi} のときと大体同じだから、特別覚えなければならないことはないかな。
- lo nicte pe lo cabdei cu mutce manku
- 今日の夜(夜であり、今日と関係のあるもの)はとても暗い。
- .e’o ko jgari lo kabri ku pe do
- コップの中であなたのを掴んでください。
- nicte
- x1 は x2 (日)の x3 (場所)における夜
- cabdei
- x1 は x2(日)と x3(基準)において同日; x1 は今日/本日
- mutce
- x1 は x2 (性質)に関して、 x3 (極性)に対して凄い
- manku
- x1 は暗い/闇
- jgari
- x1 は x2 (対象本体)・ x4 (対象箇所)を x3 (x1 の部分)で掴む/握る
- kabri
- x1 は x2 (内容)・ x3 (素材)のコップ/カップ/タンブラー/マグ/茶碗/杯
- xrula
- x1 は x2 (種類)の花
あともう1組だけ紹介して終わるね。さてソラ、問題です!次の語の意味はなんでしょう?
- po’u [sumti] = poi ke’a du [sumti]
- no’u [sumti] = noi ke’a du [sumti]
えーっと、えっと。分かった! 同格 だ。「~と同一であるホニャララ」って意味かな?
その通り! po’u と no’u はそれぞれ制限的、非制限的な同格の関係詞です。
- po'u
- 制限的関係詞(同格);直前の項(sumti)に直後の項を係らせ、前の項の指示対象から直後の項と同一であるものを選り抜く。
- no'u
- 非制限的関係詞(同格);直前の項(sumti)に直後の項を係らせ、前の項の指示対象を直後の項と同一であるとして説明する。
- mi no’u la .kocon. cu ctuca do fo la .lojban. lo xendo
- コションである私があなたに親切な方法でロジバンを教える。
- le mikce po’u le misno cu zvati lo vi spita
- あの有名人であるその医者は近くの病院にいる。
- ctuca
- x1 は x2 (生徒/門下生)に x3 (命題)・ x4 (題目)を x5 (方法)で教える
- xendo
- x1 (者)は x2 にたいして x3 (行為)で親切/優しい
- mikce
- x1 は x2 (者)を x3 (病気/怪我)について x4 (治療手段)で応接する医者/看護士
- misno
- x1 (人/物/事)は x2 (群)の間で有名
- spita
- x1 は x2 (患者)・ x3 (病/疾患)のための病院
関係詞や関係句を使い出すと文が複雑になってくるので、ここらで構文を取る問題をやっておこう!
次の文の関係詞、関係節、関係句を( )で、それらが係っている項を[ ]で囲み、さらに日本語に訳せ。
.i lo bruna poi vu xabju cu benji lo dakli ku po’u lo narju mi ne lo nurma
- bruna
- x1 は x2 の、 x3 (血縁関係)による兄/弟
- xabju
- x1 は x2 (所)に住む/暮らす/棲息/生息する
- benji
- x1 は x2 を x3 (受け手)に x4 (起源/送信元)から x5 (方法/媒体)によって送る/届ける
- dakli
- x1 は x2 (内容)・ x3 (素材)の鞄/バッグ/リュックサック
- narju
- x1 は橙色/オレンジ色
- nurma
- x1 は x2 (地域)の田舎/農村
ふむふむ…。えっと、とりあえず poi と po’u と ne があるね…。一旦、関係句節を取り払ってみると
.i lo bruna poi vu xabju cu benji lo dakli ku po’u lo narju mi ne lo nurma
↓
.i lo bruna ^ cu benji lo dakli ku ^ mi ^
になるね。で、これは「兄弟がカバンを私に送る。」という文!だからこれを土台にしてあとは語を修飾していけばOKだ。
- poi vu xabju = poi ke’a vu xabju / 遠くに住んでいる
- po’u lo narju / オレンジ色なものである
- ne lo nurma / 田舎の
だから、答えは
- .i [lo bruna] (poi vu xabju) cu benji [lo dakli ku] (po’u lo narju) [mi] (ne lo nurma)
- 遠くに住む兄弟がカバンでオレンジ色なものを田舎の私に送った。
かな? {lo bruna} のpoi節は ku前にあるから、[lo bruna] か [lo bruna (poi vu xabju)] かで悩んでる…。
よくできました。lo bruna の部分は確かに悩むね。ここは細かい所は抜きにして、どっちでも正解ってことで…。
True/False Questions
- 関係詞の語形は一貫性があり、p は「制限的」、n は「非制限的」を意味する。
- pe/ne は同一関係、po'u/no'u は何らかの関係があることを意味する。
- poi/noi に対応する終止詞は ku'o である。
- 関係節 {poi mi klama fi tu} では、 ke'a は klama の x2 にあると想定される。
-/- answers correct!